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緊迫した国際情勢が続く中、一時は開催が危ぶまれた第17回SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)が予定通り、3月12日から16日まで5日間に渡りテキサス州オースチン市で盛大に開催された。
世界各国からエントリーしたバンド数は6,000を越え、そのうち1000組が厳しい審査を通過した。そんな中から将来のビッグネイムと、最新の音楽シーンのチェックの目的ではるばる世界各国から訪れた業界関係者やファン、その数15,000人近くが地方都市オースチンに集結した。
期間中、メインストリートのシックス・ストリートを挟んだ両側約300mに軒を列ねる40近きクラブで毎夜8時から早朝までライブ×ライブ×ライブがノンストップで繰り広げられる。まるでバンドのフリーマーケットだ。世界中数あるミュージック・フェスの中でこれだけのバンド数が毎年蟻集する理由の一つは、ここオースチンの環境がオンリーワンだからだろう。5日間眠らない、いや眠れないくらいSXSWは刺激的で楽しくそして羨ましい所なのだ。
ナッシュビルと並び称される音楽首都オースチンは、テキサス州南西部に位置し、全米中のバンドや関係者が「南南西で一同に会し」、契約の機会創出の場を目的として、1986年に始まった。これはローカル・アーティストをどう広く知らしめるかで日頃奮闘するオースチンの若いスタッフたちが同じ問題を抱えた全米各地の仲間たちに呼び掛けたもので、サウス・バイ・サウス(SXSW)と名付けられて17年が経つ。
1回目は実に700人にも及ばない規模で始まったが、今では世界中のインディーアーティ
ストが集結する一大ミュージック・フェスティバル+カンファレンスに成長した。これまでにベックやベン・フォールズ、そして今年のグラミー賞8冠で話題を独占したノラ・ジョーズらがSXSWでその後の栄光のきっかけを作ったことでも重要なイベントとして知られている。
日本からは1995年に初めてSXSWに参加。「ロリータ18号」と伝説のバンド「PUGS」がその先陣をきって以来日本からは増加の一途にある。今年のエントリーは52に及んだ。審査通過したバンドは14(3バンドはキャンセル)その内6バンドがSXSWの歴史の半数にも至るジャパン・ナイトに出場した。2003年の国別バンド数ではアメリカ、イギリス、カナダ、アイルランド、オランダ、スウェーデンに次ぐ多さとなり、登録者を含めた日本からの参加総数ではスウェーデンを上回る約100人がSXSWに参加した。これだけの日本の業界関係者が参加する海外のミュージック・フェスはSXSW以外見当たらない(これまでの記録は、2000年の210人)。
今年で8回を迎えたジャパン・ナイトは、今では毎年各クラブから誘致されるほどすっかりSXSWの人気イベントの一つになっている。またこれまで7回にわたり延べ39のバンドがジャパン・ナイトに出場。内9組が海外リリース契約を交わすなどメイド・イン・ジャパン・ロックに注目が集まっている事実を雄弁に物語っているショーケースである。
金曜夜が期間中もっとも人出のあるメインの日にあたり、ジャパン・ナイトはいつもこの曜日を割り当てられている。今年のジャパン・ナイトのライン・アップを出演順に紹介すると、Minor
League、Condor44、Petty Booka、Invisbleman’s Deathbed、Papaya Paranoia、Core
OfSoulといった例年に無いほど幅広い顔ぶれとなった。
会場がオープンする7時半前には、すでに会場を取巻く列が出きていて、ジャパン・ナイトの人気を実感。3月14日8時(日本時間3月15日午前11時)予定通り開始された。
栄えある先兵の任は、マイナーリーグ。黒いパーカーを頭からスッポリ被ったフロントラインが表れるや否やあの揺さぶるような怒濤のリズムネーションが、オースチンで最大級の会場「マーキュリー」(オン・エアー・イースト同等の大きさ)に渦巻き、同時に観客から奇声が発せられ共に烈しく呼応する。観客が突き上げた3本指は、悪魔印であったのは言う間でも無い。会場のドアは常に開け放されていて、音と熱気が通りに溢れだす。すでに会場は札止ながらも、それに釣られて観客が身体を小刻みに揺らしながら物の欲しそうに列を加わる。持ち時間の40分より10分を残しノンストップで爆走したマイナーリーグが残したものは残響と余震、そして火照り。ビールで冷却しないことには堪らない位制御不能になる。バーカウンターは山のような人だかりだ。カウンターは俺様のステージとばかり、バーテンダーはこれまた手際よく暴徒化したギャングどもを捌いてゆく。それはバーテンダーと呼ぶよりアーティストにふさわしいほどカッコいいショータイムであった。
そんなシーンが日本人にとって非日常的そのものなのだ。またそんな場面が演奏する連中の限界レベルを広げるきっかけになったりする。存在感を十分示したマイナーリーグは、翌日、「裏SXSW」の異名を持つFXFW(ファック・バイ・ファックウエスト)に招待されるというオマケまで付いた。
マイナリーグの余韻を残して登場したコンドル44は、うって変わって観客の知的好奇心を呼び覚ます。ビール片手に目と耳を集中させて観客は、コンドル44の緩急のあるバロック的手法にしっかり付いてくる。その従順した反応に少し戸惑いを見せたバンドも次第にオースチンの観客の理解に反応しながらバランスをマッチングさせ、よりコントラストが際立つと、周りの観客が目を合わせながら「クール(カッコイイ)!」と言い合っている。コンドルの狙いに反応しているのだ。彼等の魅力は奥深い想像力を喚起する感性と知性だが、ストレート好みのアメリカ人にどれだけ訴求できるものか興味ある対象だった。率直に好意を表した観客の理解力の高さを感じることができたのは大きな収穫だった。
SXSWはリピートすることが一番効果的と言われている。前年にBUZZ(噂)となったアーティストを見損じた人やリピーター、それにメディアがマークするからだ。それはそうだ大体5日で1000組見れる筈が無い。毎回味わうディズニーランドのクーポンの残りの多さに似ている。
今年のジャパン・ナイトの呼物で一番注目がPetty Booka。リピーターとして一番美味しい思いをするシ−ド権をもっているようなもの、Austinでは本当にスターなのだ。
事実昨年の出場を機にアメリカのインディーレーベル(S.FのWeed label )と契約、SXSW前後に3週間ものツアー中とあって、地元新聞は写真入りで大きく紹介していた。その日の注目アーティストの囲み記事やラジオのインタビューに引っ張りだこだった。会場は、一般ファンの数が業界関係者を上回ったのが人気の浸透を物語っている証拠だろう。子供のようなかわいい二人の日本娘がウクレレをもって誰もが知るスタンダード・ナンバーを歌う様はエンターテインメント性を刺激する。会場の奥ではペティの歌に合わせムード・ダンスを楽しむ老夫婦の姿が象徴的だった。
ジャパン・ナイトが始まる直前までバンド・メンバーがチラシを街中で業界関係者に配っていたインビスビルマンズ・デスベッドは関係者の間で話題になっていた。無名のバンドのSXSWでの4日間の過ごし方のセオリーを徹底的に実践したデスベッド。その成果は、会場に入りきれない数の列々々。次のブロックまで長々と続く列を見て、諦めて他の会場に足を向ける姿の多さが目に付いた。同じ時間帯他会場ではYo
La Tengo、Spoon、El-p/Aesop Rock/Mr.Lif, Willie Nelsonといった人気アーティストとバッティングしながら長だの列を作っている彼等の努力に感心した。ステージ内外を忙しない動きで初顔合わせの観客を挑発しながら完全にコントロールしていく。40分の演奏を終えるや直ぐ即売所に向かいCDを100枚以上売切り見事にファンとコネクトしていたデスベッド。来年はもっと凄い見返りがおこりそうな気配がした。
日付けが変わった12時、シンデレラ・タイムの登場はPapaya Paranoiaの番だ。華やかな着物をモダンにアレンジした衣装に会場から大きな溜め息が漏れた。デジタル・ロックと着物姿の彼女たちとのミスマッチッチングは観客のイメージを遥かに凌駕していて、ビートに感化されて瞬時にモードはディスコに変身した。何よりも直ぐに順応したのはオシャレな地元のギャルたちだった。腰をくねらせかん高い声で反応する彼女たちにレスポンス良く追随する男たち。さっきまでのデスベッドの殺気はもうデジビートに感染して下半身にエナジーが注ぎ込まれているようだった。ジャパン・ナイト史上もっとも華やいだ場と化した。そしてときにパパイアの美しいメロディーに浮遊させハードロマネスクなパパイア・マジックを堪能した観客の表情は印象的すらあった。
最後を飾ったのがコア・オブ・ソウル。右上腕に「世界に愛を」と大きくマジックで書いたリードヴォーカルの中村蕗子は、「この為にここにやって来たの!」といった。ブッシュ大統領のお膝元であるオースチン。オースチン入りした日、地元紙に一面全段を使っての「ブッシュの地元から反戦を訴えます」という意見広告を目にしたが、街で繰り広げられて反戦デモに参加したジャパン・ナイト出場バンドもあって、その発言をステージ脇で聞いた時、何か気持ちが熱くなった。そんな気持ちを表すかのように彼女の歌はエモーショナルで聞き手を引込む。ときに大きくときに繊細な機微を醸し出すヴォーカルは将来性を感じさせて止まない。そのキャラクターと可能性に反応した業界関係者と思しき男が演奏中どこでCD買えるのかと尋ねてきたので、最後まで聞けよというと、そうだなと頷いた目はどこか恥じらいがあった。そんな観客からYou're
so HOT!(君はサイコーに色っぽいッゼ!)の合唱が起った。そんな魅力も彼女にはある。
かつてないほど世界平和を意識したSXSW。またかつてないほど多彩な音楽に溢れたジャパン・ナイト。スタッフを含め各バントは明確なテーマをもってSXSWに臨んでいて、何よりも逞しさが増した。彼の地では清々しいほど力が抜けていた若い世代が本当に眩しく見えた。しかし「主人公は自分だという目覚め」を感じさせるSXSWはやはり特別な場所?と羨む間は、残念ながら日本の音楽業界がまだまだ未成熟だともいえる。
アーティスト、スタッフ、業界、メディアそしてファン共々の精進と戦いの日はまだまだ続くとも実感した。皆のSXSW原体験に期待しよう。 |
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